風呂上がりに坂本にガーゼを変えてもらい、二人でベットへ横になった。
「なんか、久しぶりだな」
 坂本が何故か満足気に言う。「俺から離れていたからな」とは葛西は言えなかった。
 葛西が無言のままでいると、坂本が体を起して、今度は唇にキスをしてきた。
「おやすみ」
 そう言うと、葛西に背を向けて布団を被る。
「誘うなよ」
「誘ってねーよ。今日はしねーぞ。疲れた」
 葛西は背を向けたままの坂本を抱きしめた。
「葛西、今日は」
「違ぇよ」
 坂本が焦った様子が窺える。
 漸く葛西は笑うことが出来た。

「・・・明日」
 しばらく黙っていた坂本が口を開いた。
「明日は学校行くぞ。登校拒否なんてするなよ」
 冗談混じりに、それでも本気で言っているのが分かる。
「しねぇよ。ガキじゃあるまいし」
 そう言ったら、坂本も笑った。

 翌日学校へ二人で行くと、教室に仲間達が集まっていた。
 仲間以外の学生は見当たらない。よほど居心地が悪かったのだろう。
 3年だけでなく、1年から2年までいる。
 教室に入りきらず、廊下にまではみだしていた。
「葛西さん坂本さん、おはようございます!」
 一番に声を発したのは山中だった。
 それを発端に次々に葛西と坂本に声がかかる。
「おはようございます」
「怪我は大丈夫ですか?」
「顎なんともないっすか?」

 葛西は驚きの表情を隠せないでいた。
 坂本が隣にいてくれることは十分分かっていたが、仲間達が離れていくことは覚悟し
ていたのだ。
 自分の周りには、こんなにも慕ってくれている奴らがいたのかと思った。
 今まで気にしたことのない顔まである。
 そんな連中の中から、偉そうな声が響いた。
「葛西」
 取り巻き達が一斉に振り返る。そこにはリンがいた。
 リンは仲間達をかきわけ、葛西の目の前にやってきた。
「おい、リンちゃん」
 どこかからか声があがる。
「うるせえな、何もしねぇよ」
 リンはうざったそうに答え、葛西に向き直った。
「もう今更さん付けなんてしないけどな、こいつらの頭はお前なんだよ。今度裏切って
みろ。そん時は容赦しねーからな」
「リン・・・」
 その言葉に反応したのは坂本だった。坂本は笑顔で葛西を見た。
 葛西はさっきから現状が信じられないといった顔をしている。
「お前じゃ無理だ、リン。お前が葛西さんに勝てるかよ」
「うるせえ!勉三さん!」
 西島の一言で凍っていたその場の雰囲気が和らいだ。
 葛西は鞄を自分の机に置いてその場を後にした。
「葛西さん!」
 誰かが呼びとめるのを、坂本が制した。
「今は一人にしてやってくれ」
 そう言いつつ、坂本も鞄を置いて葛西の後へと続いた。
 






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