卒業式を前日に迎え、学校では練習が行われていた。
葛西は今校門の所にいた。
目の前には知らない女生徒が立っている。
うんざりと、葛西はその女生徒の前でタバコを銜えた。
ことの発端は坂本だった。
教室に、葛西より遅れてきた坂本が葛西を呼んだのだ。
「今校門の所に女が来てるよ。話があんだって」
葛西はめんどくさかったが、行かなかったら坂本に引っ張ってでも連れて行かれると
目に見えていたので、しぶしぶ校門へと向かった。
坂本がため息をこぼしたのは気付かなかった。
その女生徒の用事は予想通りだった。
葛西はうんざりと断った。
今は誰とも付き合う気になれない。
坂本が彼女でも作れば、変わるだろうか。
目の前で泣いているのを無視して、葛西は学校へと戻って屋上へ向かった。
途中通った教室に坂本がいなかったからだ。
約束せずとも、お互いがそういう時は屋上にいることになっていた。
重い扉を開けると、タバコを燻らせている坂本の後姿が目に入った。
さらさらと前髪が風に揺れている。
「早かったな」
「くだらねえ用件だった」
「泣いてたぜ、可哀想に」
「知るかよ」
坂本の隣に立つと、校門がよく見える。
葛西は舌打ちした。
「なんで断ったんだよ、今まで断ったことなかったろ」
「関係ねぇだろ」
「これから行くの、男子校だぜ?彼女作っておいた方がいいんじゃねぇの?」
「うるせえ!」
思わず葛西は怒鳴っていた。
「てめーこそ、さっさとケリつけたらどうなんだよ」
「俺は・・・いいよ」
見ると、坂本は俯いていた。
吸っていたタバコを捨てて足でもみ消している。
何度も、何度も、坂本はタバコを足で踏んでいた。
「そんなに思いつめるようなら、言っちまえばいいじゃねえか」
つい投げやりにそう言ってしまって、後悔した。
坂本の様子がおかしい。
何か思いつめてるようだ。
「そうだな・・・もうずっと・・・好きだからな・・・」
坂本が自嘲気味に言う。
そしてしゃがみこんで、顔を腕で覆ってしまった。
葛西はそんな姿を目にして、焦りと苛立ちを感じた。
(らしくねぇ・・・)
自分に対してそう思う。
今までどんなことであれ言いたいことは言ってきた。
しかし坂本のこととなると話が違う。
手放したくない。それでも、坂本が彼女を作ってしまったら嫌でも距離が出来てしま
うだろう。
どうせ離れてしまうなら、言ってしまおうか。
葛西が口を開きかけた時、坂本が立ちあがった。
何か意を決した表情をしている。
「決めた。どっちにしろ手に入らないから、言う」
「おい?」
坂本がこちらを見る。
葛西の好きな笑顔と共に。
「葛西、好きだよ」
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