卒業式からの帰り道、葛西は今までの苛立ちが綺麗になくなっていることに気がつ
いた。
学校が離れること、坂本が誰かのものになってしまうこと。
子供じみている、と、思う。
それでも坂本のことは手放したくなかった。
隣を歩いている坂本に、わざと耳元で囁いた。
「腰は大丈夫か」
「・・・!!」
坂本は真っ赤になって、卒業証書の入っている筒で殴ってきた
「痛ぇな」
「笑ってんじゃねえ、馬鹿」
「正道館な」
「ん?」
「アタマ、別に大したことじゃないらしいぜ」
「葛西・・・」
「武器とか持たねえとやってけねぇ奴らしい。下らねえな」
「下らないなら相手にしなきゃいいだろ」
「そういうわけにもいくか」
「ま、いいよ。何が変わるってもんでもねーし」
坂本は笑っていた。
隣にいる。
さらさらと前髪が風に揺れる。
失うものなどもうないのだと、葛西はこの時思った。
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