約束を、交わしていた。
葛西が入学早々入院して、仲間が去りまだ二人だけだった時。
「一緒に卒業すんだからな」
葛西が学校を辞めるのか坂本は危惧していた。
一緒にいたい。傍にいたい。
それはとても自分勝手な想い。それでも言わずにはいられなかった。
葛西に「当たり前だ」と言われて、とても安堵した。
葛西はそのすぐ後リベンジを果たして、正道館のトップに立った。
仲間達も戻ってきた。
坂本は安堵と共に、葛西が不安に襲われているのを感じ取った。
仲間を二度と失いたくないと、そういう思いが葛西からは感じられた。
だからこうして、今日も望まれた対決に挑んだのだ。
まだ一年だ。
これからも葛西はこうやって戦い続けて行くのだろうか。
葛西の苦しみが、苦しかった。
葛西の孤独が、胸を締めつけた。
葛西、俺が隣にいるだけじゃ、もう駄目なんだろうな。
喫茶COREをいつも通り二人で出た。
坂本は葛西の少し後ろを歩いていた。
「どうした」
葛西が振り返る。いつもなら隣を歩いているのに。
「別に」
坂本はそう言って、葛西の横に並びなおした。
少し身長差のある横の男を見上げる。
「なんだ?」
タバコを銜えながら視線に気づいた葛西が問うたが、坂本は何も言えなかった。
「・・・別に」
「なんか変だぜ、てめえ。どうした」
葛西がここまで気にかける人間は自分だけだと知ってしまっている。
坂本は優越感と自己嫌悪に襲われた。
それでも、それでも葛西は俺だけじゃ満足しないんだ。
いや、もう俺はいなくてもいいんじゃないか。
そんな思いさえ頭をよぎる。
親友だった。いつも一緒にいた。
葛西のことが、誰よりも大事で、自分よりも大事で、いつの間にか好きになっていた。
なぁ、葛西。
苦しいよ。
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