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泳ぎ続ける君へ3









坂本は、それから葛西を避けるようになった。
もともと長かった前髪にパーマをかけ、表情をみえづらくもしてみた。

葛西が喧嘩をするとなると、止められるのは自分だけだったが、その時ぐらいしか
葛西の傍に寄らなくなった。

葛西の事を支えたいと思うが、それはもう自分じゃなくてもいい気がした。
いや、自分じゃない方がいい。
いつ裏切られるか分からない仲間達。
葛西が信頼を置いてないことは明白だった。
それでも、坂本は葛西から離れることを選んだ。
こんな想いを抱いている自分よりは、まだあの舎弟共の方がマシな気がした。

あまりにも、苦しいのだ。

この想いを隠し通すことに。
そして何より、怯えながらも戦い続ける葛西を見ることが。

葛西はどうやったらあの孤独から抜け出せるのか。
今はあんなに慕ってくれている輩が、一度葛西を見捨てた時点でもう無理なのか。
葛西の暴走を、どうやったら止められるのか。

「はは・・・っ」

坂本は保健室のベットに横になりながら、苦笑を漏らした。

離れていても、思うのは葛西のことばかりだ。
そんな自分が滑稽に思えてくる。

「俺は離れていた方がいい・・・」

葛西が信頼を寄せてくれているのは分かっていた。
でも、ばれるのが怖い。これから先、葛西の傍にさえいられなくなることが、辛い。
結果、離れることを選んでしまった。
もう一週間は経つ。
その間葛西は普段通りに見えた。別段変ったところは見られなかった。
やっぱり、俺が隣にいなくてももうよくなったのかな・・・。

そう思った時、保健室のドアが開いた。

ドアの方に目をやると、一目で怒っていると分かる表情の葛西がいた。
坂本は教室でなにかあったのかと思ったが、その的は外れていた。

「何一人でさぼってやがる」
坂本が横たわってるベットに遠慮なく近づいて、葛西は怒気も隠さない声で言った。
葛西がタバコを銜える。
「葛西、タバコはやべぇよ」
「うるせぇよ。鍵は閉めた」
その台詞に息を飲んだのは坂本だった。
つまりは二人っきりということだ。
今は絶対避けたい状況だった。
葛西は坂本を見下ろしながら唐突に坂本へ詰問した。

「なんで最近俺を避ける」






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