全てが終わった。
坂本が病室に行くと、個室の中はからっぽだった。
坂本は迷わず屋上へと足を向けた。
重い扉を開けると、ガウンを羽織った金髪がタバコを燻らせている。
知らず笑みがこぼれる。
「こら、重傷人」
「来たのか」
「うん」
葛西に並んでフェンスの下を見ると、正道館の輩がたむろしていた。
「あーあ、あれ警察呼ばれてもおかしくねぇよなあ」
中には花束を持った奴までいる。坂本は声を出して笑った。
ひとしきり坂本が笑った後、葛西が口を開いた。
「俺はあいつらの誰一人信頼なんてしてなかった」
葛西は病院から追い出される面々を見て、ポツリと言った。
「ああ、知ってるよ」
「・・・」
坂本は言葉を返さない葛西を後から抱きしめた。
「やっと止まってくれたな」
「・・・」
「もう泳ぎ続けなくていいんだよ」
もう怯えることなんて、なにもない。
止まっても、お前が死ぬことなんてない。
立ち止っていい場所を、やっと得ることが出来たな。
「坂本・・・」
「ん?」
「それでも、俺はなめられたら、またやるぞ」
「あははっ。いいよ。もう好きにやれよ」
「おい・・・」
「信頼してるからな」
葛西が驚いたカオをする。
俺はそんな葛西にキスをした。
「俺ももう離れねえ。信頼しろよ?」
葛西は返事の変わりに俺をきつく抱きしめた。
一方、お見舞いにきていた正道館の面々は、追い出されながらも屋上でくっついて
いる金髪と黒髪にくぎ付けになってため息をこぼしていた。
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