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夏の思い出 4









「なあ・・・どうすっか・・・」
海へ落ちていく夕日も美しい砂浜で、リンは項垂れていた。
それはナンパにことごとく失敗したから、だけでは無い。
「どうするもなにも戻るしかねぇだろ」
リンの隣では一人どう海を楽しんだのか謎な西島が立っていた。
「俺はさっき見た・・・あいつらが二人で宿に向かってんのを、俺は見た・・・」
「それはいつ頃だ」
「2,3時間前」
「じゃあもう大丈夫だろ。行くぞ」
何がどう大丈夫なのか。
西島は確信を持ってそう言い、踵を返そうとした。
「お前は大丈夫なのかよ・・・!!あいつら二人っきりの中入ってくんだぞ!!俺は葛西が怖えーんだよ!!」
以前なにかをやらかしてしまったのかもしれないリンが悲痛に叫ぶ。
「しつけーなてめぇは。あいつらもそこまで馬鹿じゃねーつってんだろ。・・・そもそもそんなに嫌だったらなんで
あいつら二人に決めたんだよ」
西島は、言葉とは裏腹に穏やかな表情をしていた。
リンは黙ってしまったが、西島は気づいている。
いくら文句を言っても、とばっちりにあわされても。
結局はリンも二人のことが好きなのだ。
男の友情でその言い方は甘すぎるかもしれないが、リンは仲間として、友人として二人を認めている。
(まぁ自覚はねーだろーけどな。考える脳みそが足りないからなこいつは)
だがあの二人に対しての立場が似たような自分がそうなのだから、きっとこいつもそうなんだろう。
「おい、行かねーなら勝手にしろよ」
「西島!お前わかってんのか??!!あの葛西だぞ!あれに睨まれたらどんだけ怖えーか!!」
ぎゃあぎゃあとやかましいリンの声を背中に聞いて、西島は宿へと歩を向けた。



二人が(特にリンが)遠慮がちに宿に戻ると、葛西も坂本も至極普通だった。
「遅かったな」
テーブルに向い合せに座り、タバコを吸っている姿にリンはひどく安心して調子が戻ったようだった。



リンが普段の調子に戻り、五月蠅く話をする中、西島は葛西がひどく満足気な様子であることに、気づいてしまった
のだが。
(2,3時間の間になにがあったか・・・俺は聞かねぇよ・・・葛西さん・・・)








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