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君の居場所 2













ピンポーン



遠くでなにかが鳴っている。



ピンポーン



はっきりと主張しているのに、どこか遠慮がちなその音に目が覚めた。
こんな時、普段は面倒臭がってわざわざ出たりしないのに、玄関に向かう自分が不思議だった。
部屋の窓から誰が来たか確認もしなかった。
何故か、確信出来た。



ドアを開けると、門の前に、黒い頭が見えた。
「坂本・・・」
相変わらず重い体を引きずって、葛西は門の鍵を開けた。
「お前、風邪だろ」
葛西が目の前に立つと、坂本は遠慮無しに言った。
いつだって、葛西に物事を一番はっきり言うのは、坂本だった。
葛西は何故か苛立ちが薄れていくのを感じた。
だがしかし、体のだるさはどうにも出来ない。
「・・・なんで分かった・・・」
「昨日お前の腕変に熱かったからな。ほらこれ見舞い。風邪薬と水」
なんだかとても的を得てる見舞いの品で、葛西は笑いたくなった。
しかし出てきたのは苦しげな咳だった。
「ゴホッゴホッ・・・入れよ・・・」
咳の合間にそう促すと、坂本は素直に葛西の後に続いた。



葛西はベットに座って、坂本から薬とペットボトルの水を受け取った。
自分以外の家族がこの家にいないということはもう知られている。
よく気のつく奴だ、と、葛西は思った。
「飯は食ったのか?」
薬を飲んで、ベットに横になろうとしていた葛西に、坂本は聞いてきた。
「なにも食ってねーよ」
「なんか食った方がいいだろ。台所、下だよな?」
「てめーがなんか作んのか?」
「簡単なもんだったら作れるよ。お前は寝てろ」
坂本は平然と言って部屋を出ていった。
葛西はなにかを考えるのもだるく、目を閉じた。
途中意識が浮上してきた時、下からやたらガサゴソと音が聞こえたが、かまわず葛西は寝続けた。






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