四天王他二人を除く面々は、池袋の駅に直結している喫茶店にたむろすることとなった。
ここは大抵の喫茶店よりはフロアがかなり広く、全員が二階の喫煙席に収まることが
出来た。
もちろん他に客はいたのだが、入ってくる輩を見て早々に店を出ていってしまうはめ
になってしまったのだが。
自然と同じ学校の生徒でフロアが区切られた。
一番気まずい思いをしていたのは正道館の面々だった。
そんな中ヒロトが爆弾を投下した。
「まさか正道館の連中と一緒になるとはな」
「なんだとぉ?!」
ヒロトの爆弾に一番に反応したのは(席が遠いにも関わらず)リンだった。
しかし落ちついている人間も中にはいた。島袋と西島の声が同時に発しられた。
「やめろ。もう終わったことだ」
その言葉に臨戦態勢に入っていたリンとヒロトはおとなしく席に着いた。
「しかし驚きっすよねー。どうやって四人一緒になったんすかね」
マーシーだ。
大人数相手に飛び蹴りをかました挙句下敷きになった為、他の連中より顔の絆創膏が
少し多い。
「それもそうだよな。どういういきさつであーなったんすかね」
八尋がマーシーの言葉に対して島袋に問いかける。
「知るかよ。何も考えてねーんじゃなねーのか、あいつのことだからな」
少し笑みをこぼして島袋は答えた。
「確かに何も考えてなかったのかもな。一人で行っちまうぐらいだし」
「ホントあの人は何考えてんだが。まぁ馬鹿だからな」
「ああ、成長ってもんがねーよな。千秋ちゃんなんてまた心配してんじゃねーのか」
尻馬に乗ったのは勝嗣と米示だった。ここぞどばかり前田のことを馬鹿馬鹿と笑い
ながら言い合う。
不在の前田にヒロトはひどく遠慮していた。
「なんだ、まだ落ちついてねーのかよあの二人」
亀である。亀と鶴は帝拳メンバーのすぐ傍に座っていた。
「あれだけのバトル交わしたってのにまだくっついてないんだよ」
勝嗣が呆れて答えた。
「かーっ情けねーっ。どんだけ奥手なんだよ。まぁ薬師寺も今かなり情けねーけどな。
女のシリばっか追いかけてんじゃねーよ」
「なんだよまだモノにしてねーのか?」
「まだまだ。毎月雑誌の占いなんか読んでる時点で駄目だと思うけどな」
「ぎゃっはっはっは!!そんなの読んでんのか!!」
「女のシリならまだいいじゃねーか」
勝嗣と亀が盛り上がっていた所に、またしても別の爆弾が投下された。リンである。
「おい、リン」
「いいじゃねーか勉三さん。もう俺は耐えきれねーんだよ!いつでもどこでもいちゃ
いちゃべたべたしやがって!場を考えろっつーんだ場を!!」
「落ちつけ、リン。今に始まったことじゃない」
「そうっすよ。リンさん。思えば俺が入学した時からそうだったんだし・・・」
「黙れお前ら!てめえらは我慢出来んのかあの状況!!」
憤怒するリンに対して、西島も含め正道館の面々は俯いた。聞いていなくともため息
が聞こえてきそうな雰囲気である。
その風景にクエスチョンマークを浮かべていなかったのは、須原と上山だけだった。
「・・・もしかして、葛西、そうなんか?」
須原が意識せず声のトーンを落として正道館の面々に問う。
目には同情と「同病相哀れむ」の色が浮かんでいた。
「もしかしてなくてもそうだよ!見てればわかんだろ!」
「あちゃー。上山くん、ワイらだけやなかったんやな。被害におうてるの」
「そうみたいだな」
「あ?どういうことだよ」
「気付かなかったのかよ、リン。病院で見てなかったのか?」
西島の問いにリンは漸く気付いた。
「あのチビか?!てことは鬼塚もそうなのかよ??!!」
「おいこら、気安く呼び捨てにしてんじゃねぇよ」
「ええてええて上山くん。もうワイらは同類や。同じ被害者や」
須原は天を仰いだ。
「同じってことは・・・お前らのトコもそうなのか?」
あくまで冷静に言ったのは西島だった。だがトレードマークのサングラスをなんども
指で押し上げていた。
「同じも同じや。学校でも店でもいちゃいちゃべたべたしとるっちゅーねん。鬼塚さん
は他にはそない態度取らへんからな。バレバレやっちゅーねん。ワレらもうかなり
辟易させられとんねん」
「あの鬼塚がか??!!信じらんねー」
「ほな一回ワイらの学校来てみたらええんちゃうか・・・もうどないなってもええわ」
「須原、気持ちは分かるが誘うことはねぇだろ・・・」
「だってなぁ上山くん、せっかく見つかった同類やろ?分かって欲しいやんか・・・。
ワイもうあの鬼塚さんの顔見るだけで甘いモン食えなくなるんや・・・」
「分かる!分かるぞ!!・・・須原だっけか?いい加減にしてほしいよな!!せめて
学校内だけでも隠せっつー話だよな!お前らこそあいつらを見に来い!マジでこっち
のやる気無くしてくれんだよ!!」
リンがびしっと須原たちを指差した。
「それも信じられん話やな・・・。鬼塚さんをやってくれた時の葛西なんてそりゃぁ
鬼畜としか言われへん人間やったやないか・・・」
「あれは・・・・・・俺たちものってはいたが・・・最後の方は葛西さんの焼きもちの産物
だった・・・」
西島が肩を落とす。
「ええ?!そうなんか?!」
「坂本が前田に頼ったのがいけねぇんだよな」
「えーと・・・リンくん、か?本当にそうなんか?」
「ああそうだよ!前田をやってた時の葛西が何思ってたなんて考えたくもねえ!!」
前田という単語が出たにも関わらず、帝拳の面々は相も変わらずわけがわからなかっ
た。鶴と亀もぽかーんとアホヅラをしている。
「しかも全部終わった後なんて更にくっついてんだよあいつら!廻りっつーもんが
見えてねえ!!」
「リン、その通りだが少し落ちつけ」
「西島だって胃が痛ぇっつってただろ!な!お前らもそうだよな??!!」
「たしかに・・・」
「そうっすね・・・リンさんの言う通りっす・・・」
「俺も甘いモン駄目になった・・・」
「二人でいられると、俺ら距離感じますよね・・・」
リンの言葉に正道館の皆が頷き、頭を抱えていた。
もう西島も止める気は無いようだ。むしろ他の連中と一緒に頭を抱えている。
「なんかわけわかんねーけど、葛西も鬼塚も頭切れんだからいーじゃねーか」
話題転換となったのは、それまでの顛末を黙って見ていた勝嗣の一言だった。
「馬鹿が頭だと大変だぞー。俺ら振りまわされまくりだもんな」
「確かにな」
「いや!まだ馬鹿の方がいい!頭切れっから計算して俺らに何も言わせないように
するんだよあいつは!」
勝嗣と米示のやり取りにリンは大声で反抗した。
「それはあるな。鬼塚さんもワレらに目で何も言うなっつってんねん」
「だろ??!!」
「いやぁ毎月恋愛占い見てる頭よりはいいだろ」
「馬鹿はホント大変なんだよなー」
こうして二階の喫煙席一帯はそれぞれの頭が不在なのをいいことに言いたい放題やり
たい放題となっていた。
声も知らず大きくなっており、一階にまで響いている。
その一階から二階へと続く階段に、しばらく前から固まっている六人の姿があった。
前田と薬師寺、そして葛西は仲良くみけんにしわを寄せ拳を震わせている。
自分の行動と廻りの思いに気づいていた鬼塚は平然としていたが、小太郎は顔を真っ赤
に染めて俯いていた。
(これは血を見ることになりそうだな)
坂本は思ったが、自分も疲れているのだ。
どうなっても止めないで休んでいようと決めて、一人先に階段を登った。
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