「葛西、好きだよ」
言葉としては分かったが、理解出来なかった。
好き?坂本が?
俺を?
驚いた顔をして黙ったままの葛西を、坂本は誤解して受け止めた。
「気持ち悪ぃこと言ってごめんな。ずっと好きだった。でも諦めるから。葛西は何も
変わらなくていいよ。高校でも離れてるから」
そう言って坂本は葛西に背を向けた。
歩き出そうとする坂本の腕を強く引いて後ろから抱きしめる。
このまま行かせるわけにはいかなかった。
「か、葛西?!」
「勝手に終わらせるんじゃねえよ」
「だって・・・離せよ・・・」
坂本の体が震えている。
「俺もそうだ」
「え?」
「俺だって好きだっつってんだよ馬鹿」
「!!」
「こっち向けよ」
そう言って抱きしめていた手を離すと、坂本はおずおずと葛西に向き合ってきた。
「おい・・・」
坂本は泣いていた。
初めて見た、坂本の泣き顔だった。
「嘘つくなよ・・・彼女いたくせに・・・」
「嘘じゃねえ。女と長続きしなかったのはてめえのせいだ」
「え・・・」
「いくら女といてもてめえのことが気になってしょうがなかったんだよ」
「葛西・・・」
葛西は近づいて、坂本の涙を手で拭った。
自分でもらしくないことをしていると思う。
だがそうしたかったのだ。これ以上、泣いて欲しくない。
ようやく泣きやんだ坂本の顔に顔を近づける。
一瞬だけ軽く触れて、そして更に深く口づけた。
「・・・ん・・・」
酸素を求めて開かれた唇に舌を差し込む。
坂本の唇は柔らかかった。
口内は、火傷するほど熱かった。
唇を離すと、坂本の膝がカクンと折れた。
葛西は坂本の体を抱きとめた。
「はあ・・・はあ・・・」
「よかったろ」
「うるせぇよ・・・馬鹿・・・」
坂本は耳まで真っ赤だ。
「こ・・・こんなんなんて・・・知らなかった・・・」
まだ息も荒いまま、小さい子供のような顔で口を覆う。
「もしかして、初めてか?」
「・・・・・・・」
抱きとめている坂本の体の熱が上がった気がした。
葛西は優越感を感じてしまった。
「坂本」
「・・・あ!」
耳元で名前を呼ぶと、坂本から艶の入った声が漏れた。
もう葛西は自分を抑えることが出来なかった。
「今夜泊れよ」
坂本は全身真っ赤になって頷いた。
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