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始まりの唄1









いつの間にか、惹かれていた。

出会いは中学だった。
通学途中、道端で数人の学ランが弱そうな奴を囲んでいた。
カツアゲか・・・。
くだらねぇと思ったが、喧嘩していけないルールなどない。
俺はその囲まれた奴にも目をやらず、まず囲んでいた学ランを一人殴ろうとした。

だがその場の空気が一変した。

どう見てもやさ男にしか見えないそいつが、正面の男に正拳を喰らわせたのだ。
殴られたそいつは吹っ飛び、立てない様子だった。

俺は、別の奴に手をかけた。
殴り飛ばしたところで、そのカツアゲされていた男が驚いたカオをした。
「全部やるなよ、俺にちょっとはやらせろ」
随分と自分勝手な言い方だと自覚はあったが、そいつは苦笑をもらして頷いた。
「なめんじゃねーぞ!!」
他の輩が向かってきた。俺はそいつと一緒にそいつらを殴り倒した。
やっぱり、こいつは見た目に寄らない奴だな。

「ありがとうな葛西、おかげで助かった」
「俺がいなくても片づけられたんじゃねーのか?」
「あはは」
「おい、ちょっと待て。なんで俺の名前知ってんだ」
「学校じゃ有名だろ。皆知ってるよ」
確かに俺は一年で今の中学を占めた。
なるほどな。
「てめえもなかなかやるじゃねーか。名前なんつーんだ?」
「坂本。隣のクラスだったんだよ。よろしくな。」

初めて向けられた笑顔に、一瞬時が止まった。
それが、坂本との出会いだった。
中学二年の始まり、桜の舞う季節だった。






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