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始まりの唄2









屋上でタバコを燻らせていると、重い扉の開く音がして、坂本が顔を出してきた。
「やっぱりここにいたな」
笑顔と共に、自分もポケットからタバコを取り出した。
「体育なんてやってられっか。めんどくせえ」
「お前の舎弟が言い分けしてくれるらしいよ」
坂本はタバコを吸いながら俺の隣に座った。

もう二年、ずっと一緒にいた。
坂本は見た目は弱そうだが実は強い。
その強さも買って、俺は坂本を認めていた。
中学二年、三年と同じクラスになった。俺は自然と坂本とつるむようになった。

「今さ・・・」
坂本が口を開いた。
「なんだ」
「彼女、いるだろ。うまくいってんのか?」
声が固い印象を受けたのは錯覚だろうか。
「知らねえよ。お前、だから最近俺のこと避けてたのかよ」

ついこの間、知らない女に告白された。
めんどうだったので、OKをした。
それから坂本は帰りも一緒じゃなくなり、授業を一緒にふけるのもやめていた。
案外、分かりやすい奴なんだな。

「だって、いつも俺と一緒だと、彼女に悪ぃだろ」
「そんなこと気にするな」
俺は今のオンナと別れることを決めた。



坂本が、一番優先なのだ。
二年一緒にいて、誰よりも近づきたい存在になっていた。
今までオンナを作ってきたのは、それを誤魔化すためだ。
自分の気持ちを、誤魔化すためだ。


「また長続きしねーのか?」
坂本が笑いながら言ってくる。
俺は気が長い方ではないと自覚している。
それに、今年卒業だ。
もう離れることになるだろう。
俺は意を決した。

「やっぱ他に惚れてる奴がいると、続かねえ」

坂本は何故か暗い表情を浮かべた。
その後頭部をつかんで、強引に唇を奪った。
坂本の目が見開かれる。
もういいと、思った。
どうせ進路で離れるのだ。
だから、せめて、俺の気持ちだけは残しておこう。






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