保健室の告白から、二年が経った。
だが現状は変わらなかった。
葛西は相も変わらず喧嘩に明け暮れている。
一年の時、二人が恋仲になってから、坂本はリンと西島からタイマンを
もちかけられた。
いつも葛西と一緒にいることが気にくわなかったのだろう。
「No2気取りかよ」
そう言われて、その気はないがはたから見たらそう見えるのだろうとため息をはいた。
正直めんどうくさかったが、それぞれ二人を相手にして、坂本は勝った。
周囲の驚きは半端ではなかった。
どう見てもやさ男で、喧嘩には縁のないように見られる坂本の強さに。
もともと坂本は強かった。
だが殴り合いはそんなに好きではないので表に立つことがなかっただけなのだ。
攻撃を、うまくかわせるのは葛西の攻撃を知っているからだ。
葛西の鍛錬の相手と銘打って、何度も葛西の攻撃を受けてきた。
葛西のパンチや蹴りのスピードは半端ではない。
その時の葛西は本当に当てたりはしなかったが、坂本がスピードを上げるのには十分
役立った。
葛西の家にあるサンドバックにも何度もお世話になっているのだ。
筋肉があまりつかない体質の細い体でも、それなりに攻撃には自信があった。
しかしその時坂本は必死だった。
負ければ、葛西の隣にいられなくなる。
葛西を止めることが出来なくなる。
それしか考えていなかった。
今日も人目につかない空き地で、喧嘩を売ってきた学校をのした葛西だった。
喫茶COREでは大いにその話で盛り上がっていた。
しかしいつもと変わらない雰囲気の中、とある一年がある一言を発した。
「四天王の中で葛西さんが一番だよなぁ」
その言葉に反応したのは、当の葛西だった。
「おい」
「え?あ、は、はい!」
「四天王ってのは、なんだ」
坂本も葛西の向かいの席で聞いていた。嫌な予感がする。
四天王の顛末を聞いて、葛西は眉間に皺を寄せた。
「・・・一番強い奴は四人もいらねえ」
坂本は心が痛むのを感じた。
また、怯えているな。
お前はいつまで、泳ぎ続ける?
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