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泳ぎ続ける君へ7









坂本は葛西の家にいた。

あのあと、葛西は舎弟に「三人のこと、あらっとけ」と告げて坂本を連れて先に
COREを出た。

横には上半身裸のままタバコを燻らせている葛西の姿がある。
体を繋げるようになって、約二年。
葛西が自分を必要としてくれているのは分かっていた。
だが、別のあの苦しみが坂本にとってどうしたらいいか分からない。

葛西を、止めたい。
もう泳ぎ続けなくていいのだと、告げたい。
怯え故戦う葛西を見るのは、本当に辛いのだ。

どうすれば止まってくれる?
葛西を見ていると、戦っている葛西の背中を見ていると、「止めてくれ」と言っている
ような気がしてならないのだ。

もう、泳ぎ疲れたろう?






「どうした?」
気づくと、坂本はじっと葛西の顔を見ていた。
「・・・別に。・・・やるのか?四天王」
「四天王って言い方やめろ。どうせカスどもだ」
葛西は不遜に笑う。
「・・・俺は行かねぇ」
「坂本?」
「俺は行かない。勝手にやってろ」
坂本は服を手に取り身に纏うと、葛西の部屋を出て行った。



俺が言っても、止まらないだろう?
どうすれば、止まってくれる?


その日から、坂本は独自に四天王の情報を集め始めた。

渋谷の鬼塚も、浅草の薬師寺も吉祥寺の前田にやられたと言う。
どちらも、タイマンで。
しかも前田にやられてから、鬼塚は変わったと言う。
仲間を信頼せず、駒のように扱っていた男が、態度が変わり今はもう仲間と打ち解けて
いると坂本は葛西より自分を慕ってくれている舎弟から聞きだした。
あいにく渋谷にも吉祥寺にもに知り合いはいなかったが、その時坂本が頼れるのは
前田だと思った。





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