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君の居場所 1













バキッ!!
「ぐっ・・・」
冬の匂いを感じさせる風の中。
ドサリ、と音を立てて、葛西の目の前で一人の男が無様な姿で倒れた。
近くの高校の制服である。
葛西はフンッと鼻を鳴らし、その生徒の腹を蹴った。
「おら、もう終わりかよ」
「・・・か、勘弁してくれ・・・」
「ちっ・・・」
今回の相手も、正道館ではなかった。
正道館以外の高校の生徒は、本当にカスばかりかもしれない。
葛西は地面に転がしていた鞄に近づき、乱暴に持ち上げた。



とても苛々していた。
待つということが、こんなにも苛立つものとは思ってなかった。



とても苛々している。そしてなんだかフラフラする。



「あーあ、終わってたか・・・」
鞄を手に取った時、少しめまいがした。
額に手を当てていると、後ろから暢気な声がした。
振り返らなくてもわかる。
どうしてこう何度も、自分の居場所がわかるのだろうこいつは。
「坂本・・・」
葛西が振り返ると、坂本は哀れにも倒れた男の方を見つつ、葛西に歩み寄ってきた。
「また高校生相手かよ。お前最近荒れないか?」
そう言いながら、坂本は自然な動作で葛西の腕の埃をはらった。
「今さらだろ」
「まぁそうかもな・・・あれ?葛西お前・・・」
何故か不思議そうな声を出して、坂本は葛西の腕を掴んだ。
その手を乱暴に払う。
「ほっとけ。・・・じゃあな」
いつもならこういう時は一緒に帰るのだが。
意地っ張りな自分。
それに加えて、なんだか今はしゃべるのもだるい。
葛西は坂本に背を向けて歩き出した。
坂本が動く気配はなかった。



翌日の朝。
いつも通り、遅刻確定の時間に葛西は目を覚ましたが、ひどくだるかった。
起き上がるのも億劫で、毛布から出ることもせず寝返りを打つ。
そうしたら、次はなんだか頭がぐらぐらしてきた。
こんなんで学校なんか行ってられるか。
葛西はそのまま目を閉じた。




昨晩も、やたら長く感じられた。






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