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みんなで帰ろう2









結局近くの病院はガラの悪い学生で埋まることとなった。
四天王の四人以外はすぐに診察が終わったが、やはり四人は少し時間がかかった。
一番遅く出たのは前田だった。

坂本が料金を払うため席に座って待っていると、遅れてすぐ隣に人が座ってきた。
葛西だった。
「・・・ひでえ顔」
「うるせえな。大げさなんだよ」
葛西の顔は絆創膏とガーゼに覆われていた。しかし入院は免れたらしい。
知らず安堵の息がもれる。
葛西はそんな坂本にまた寄りかかってきた。
「疲れたか?」
「流石にな。呼ばれるまででいい。少しこうしててくれ」
「いいよ」
そう言われると、葛西は目を閉じた。
病院は混んでいる。しばらくこの状態が続くだろう。

その光景を遠目に見ているのは正道館の面々だった。
もう慣れてしまっているが、椅子の上から覗く黒い頭と斜めになった金髪にため息が
漏れてしまう。
ここは思いっきり公共の場だというのに。
幸いにも他の学校の連中は人ごみの中というのもあり気づいてもいないようだった。
病院側としては早々に追い出したい連中であるが、もらうものをもらわないと帰すに
帰せない。
病院の料金支払いカウンター内は静かな激戦区と化していた。
そんな中、入口から声が響いた。

「鬼塚さん!!」

その声に皆の目が集中する。
目を閉じていた葛西も、坂本の肩から顔を上げて声のした方に目をやった。
楽翠の制服を着ている随分小柄な学生だった。
呼ばれた鬼塚は足早にその学生に近づき、肩を抱いて外へ出て行った。
「・・・まだガキじゃねえか」
「そういうなよ。鬼塚あーゆーのが好みなのかな」
「気色悪ぃこと言うな」
自分たちのことを見事に棚に上げて、二人は小太郎について感想を述べ合った。

無事に全員の清算が終わり、病院を後にしたが、四人の疲れが相当なものだったので
近くの喫茶店に寄ることにした。
流石に全員は入らなかったので、坂本が駅近くの店にでも入っていてくれと指示を
出した。
喫茶COREのマスターは、残った坂本と小太郎、そして四人の様子を見て店じまいを
してくれた。
「悪いな、マスター」
「いいよ、昨日の今日で何かあったんだろ。ゆっくりしていきなよ」
マスターは坂本にそう言うと店の奥へと入っていった。
坂本はこの店をたまり場にして良かったと心から思った。

四天王の四人は思い思いの席に着くと、早々に寝始めた。
鬼塚のすぐ隣にはかの小太郎という学生がまだ心配そうに鬼塚の寝顔を眺めている。
坂本も葛西の隣に座った。別にカウンターの席でもどこでも良かったのだが、今は
葛西の隣にいたかった。
バカみたいに無茶をし、疲れ果てている葛西の隣に。
「そんなに心配することねーよ」
「え、あ・・・坂本さん・・・でしたっけ?」
「そうだよ。どいつもタフに出来てんだろ。大丈夫だよ」
小太郎を見ているとなんだか子犬を連想させるが、それは言わないことにした。
あの鬼塚が尻に敷かれる程なのだ、何が隠されているか分からない。
「心配っていうか・・・ちょっと自己嫌悪ですね」
「自己嫌悪?」
「須原さんたちはあの場に行ったのに、なんで俺いかなかったんだろうって。俺弱い
から大して約に立たないだろうけど、傍にいたかったな・・・」
そこまで言って、小太郎はいきなり真っ赤になった。
「あ、いやあの!傍にいたいっていうのはそういうわけじゃ!!」
ぶんぶんと目の前で両手を振る仕草に、耐えきれず笑ってしまった。
「大丈夫だよ。分かってるから。俺達も同じだから」
今度は逆に坂本が鬼塚の台詞を借りる。
「え?」
「だから、同じなんだよ」
小太郎は、そう言って葛西に目をやる坂本を見て台詞の内容を察したようだった。
赤い顔は戻らない。
「でも坂本さんはあの場にいられたんですよね・・・鬼塚さん、危ない時は絶対俺を
呼ばないんですよ。皆から言われてやっと知ったってことが多くて・・・。そんなに
俺は頼りないですかね」
坂本は鬼塚が尻に敷かれてる状況が理解出来たような気がした。
小太郎君の目が座っている。
(そうとうこの子には弱そうだな・・・)

「俺も呼ばれたわけじゃないよ。仲間が偶然やられてね。それで知ったんだ。こいつ
もいつも無茶ばかりする。」
「傍にいたいですよね」
「そうだね」
そうだね。どんなに隣にいても足りないぐらい、傍にいたい。
そんな相手なんだな。

会話が途切れた時、葛西と鬼塚が同時に起きだした。
(やっぱり起きてたか・・・)
坂本は今の台詞を少し後悔した。流石に今のは恥ずかしいだろう。
鬼塚もきっと聞いてた。少しバツが悪そうに小太郎を見ている。
「横でぐちゃぐちゃうるせーよ。寝れねえ」
葛西はそう言いながらタバコを取り出して火を点けた。
鬼塚も無言でタバコを取り出す。
「鬼塚さん」
「・・・なんだ」
「怪我、平気ですか」
「さっき言っただろ。大したことねぇって。」
「そうですか」
「おい小太郎・・・」
「平気ならいいんです。心配しました」
「あー・・・悪かったっつってんだろ」

鬼塚のこの態度は、付き合いのほぼ無い二人にとってもらしくないと思えた。
そして笑えた。
「笑ってんじゃねえよお前ら」
しかし鬼塚の顔は怒ってはいなかった。
誰かから鬼塚は一回ダブっていると聞いたことがある。
思いだしたくはないが、四天王狩りの時の情報収集の時だ。
一つ違うだけでこんなにも態度が変わるのか。
葛西だったら間違いなく怒っているところだ。
そんなことを坂本が思っていると、薬師寺や前田も起きだしてきた。
「うるせえなぁ」
「あ?小太郎じゃねえか。なんでここにいるんだ?」
「皆起きたか。他の連中は別の場所にいるけど、移動するか?」
坂本の一言に皆がうなずいた。
坂本はリン達に預けていた携帯に葛西の携帯から連絡を取り、場所を聞いて六人で店
を出ることとなった。
前田たちを先に出して、立ちあがる葛西を支えようとした所、後頭部をつかまれて軽
くキスをされた。
他の連中は外に向かっていて誰も気づかない。
「葛西?」
「いつも俺の傍にいんのは、誰だよ」
「やっぱ聞いてたか」
二人で笑い合い、喫茶店を後にした。




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